1. はじめに
近年、中小企業の経営者が直面している課題の一つが、従業員の早期離職問題です。特に新規学卒者の就職後3年以内の離職率が高いことが、厚生労働省の調査で明らかになっています（新規学卒就職者の離職状況(令和３年３月卒業者)を公表します｜厚生労働省）。令和3年3月に卒業した新規高卒就職者の離職率は38.4％、新規大卒就職者では34.9％という結果が出ています。この状況を改善し、従業員が長く働き続けられる環境を整えることは、企業の持続的成長にとって不可欠です。本記事では、早期離職を防ぎ、従業員を企業に定着させるための具体的な取り組みや注意点について解説します。
2. 早期離職の背景と原因
新規学卒者の離職率が高い背景には、以下のような要因があります。
期待と現実のギャップ
新卒者は企業に対して高い期待を抱いて就職しますが、実際の仕事が期待と異なると、モチベーションが低下し離職に繋がりやすくなります。
職場環境のミスマッチ
職場の文化や人間関係が合わないと感じることも、早期離職の原因の一つです。
キャリアパスの不透明さ
入社後のキャリアの道筋が見えないと、将来への不安が高まり、転職を考えるようになります。
育成体制の不足
教育や研修が不十分な場合、仕事のやり方がわからず、成果が出せないまま離職するケースも少なくありません。
3. 早期離職を防ぐための取り組み
企業が取り組むべき具体的な対策について、いくつかご紹介します。
リアリティショックの緩和
新入社員が抱く「現実とのギャップ」を埋めるためには、入社前のインターンシップや見学会の実施が効果的です。事前に職場の雰囲気や仕事内容を知る機会を提供することで、入社後のミスマッチを減らすことができます。
メンター制度の導入
新入社員に対してメンターをつけ、日常的な相談窓口を設けることも有効です。メンターは新入社員の悩みや不安を早期に察知し、解決に向けたアドバイスを行う役割を担います。これにより、孤立感を防ぎ、職場への適応をサポートすることができます。
キャリアパスの明確化
入社後の成長とキャリアの道筋を明確にすることは、社員の将来への安心感を高めます。キャリアプランニングの面談を定期的に行い、本人の希望と企業のニーズを調整しながらキャリアパスを描くことで、長期的な定着を促進します。
職場環境の改善
仕事の内容だけでなく、職場の環境も重要です。例えば、リモートワークやフレックスタイム制度を導入することで、働き方の選択肢を増やし、仕事とプライベートのバランスをとりやすくすることが可能です。また、オープンなコミュニケーションの場を設けることで、職場の風通しを良くし、社員の満足度向上を図ります。
4. 離職率の高い業種における特別な対策
調査結果によると、宿泊業や飲食サービス業、生活関連サービス業などは特に離職率が高い傾向にあります。これらの業種では、労働時間が長く、不規則になりがちな点が課題とされています。これらの業界における早期離職を防ぐためには、以下の対策が効果的です。
労働時間の見直し
適切な休暇の取得を奨励し、長時間労働の是正を図ることが重要です。
給与体系の改善
パフォーマンスに応じた昇給やインセンティブ制度を整えることで、仕事へのモチベーションを維持することができます。
人材育成の強化
接客スキルやリーダーシップを養う研修を実施し、社員が自身の成長を実感できる機会を提供します。
5. 中小企業における採用・定着の工夫
中小企業では、規模が大きい企業に比べて人材確保が難しいため、採用時からの工夫が求められます。以下のポイントを押さえておくとよいでしょう。
柔軟な働き方の提供
リモートワークや短時間勤務の導入により、多様な働き方を提案し、幅広い人材にアプローチします。
現場の声を尊重した採用活動
現場社員と応募者が直接話す場を設けることで、企業の文化や職場の雰囲気を事前に伝えることができます。
定着支援の強化
入社後のフォローアップを強化し、早期離職のリスクを低減します。定期的な面談を通じて、社員の成長や課題を確認することが大切です。
6. まとめ
新卒者の早期離職率は、企業の将来を左右する重要な課題です。採用後の適切なフォローやキャリア支援、働きやすい職場環境の整備を通じて、社員が長く活躍できるようサポートすることが求められます。弊所では、企業の人材定着を支援するためのさまざまなサービスを提供しています。離職率の低下に向けた取り組みについて、お困りの際はぜひ弊所までご相談ください。
