熊本労働局は、令和5年度における長時間労働が疑われる事業場への監督指導の結果を公表しました。今回の調査では、時間外・休日労働が月80時間を超える事業場や、過重労働による労災請求が行われた事業場を対象に監督指導を実施しました。監督指導結果では、長時間労働や労働時間管理の不備が明らかになり、多くの事業場が違法な時間外労働や健康障害防止措置の不足を指摘されています。職場環境の改善に取り組む企業として、長時間労働是正のためにどのような対策が必要かについて解説します。
調査内容
調査対象:342事業場
主な違反内容
①違法な時間外労働を確認した事業場:138事業場(40.4%)
うち、月80時間を超える時間外労働があった事業場:85事業場(61.6%)
② 賃金不払残業があったもの: 15事業場 (4.4%)
③ 過重労働による健康障害防止措置が未実施のもの: 71事業場 (20.8%)
調査結果のポイント
今回の監督指導では、月80時間を超える時間外労働が確認された事業場が全体の40.4%に達し、また健康障害防止措置が不十分な事業場も多いことが明らかになりました。厚生労働省は「過重労働解消キャンペーン」などを通じて、企業における長時間労働是正の強化を推進しています。
企業が取るべき具体的な対策
1. 労働時間の管理の徹底
ICカードやタイムカードの導入
従業員の出退勤を自動で記録できるシステムの導入は、労働時間の実態把握に役立ちます。
自己申告制の見直し
自己申告制に頼ると、実際の労働時間が把握しづらい傾向があります。企業としても自主的なチェック体制を整え、実際の労働状況と合致しているか定期的に確認しましょう。
労働時間短縮への目標設定
月45時間以内を目標に、各部署や個人単位で進捗状況をチェックする仕組みを作りましょう。
2. メンタルヘルスや健康管理の充実
定期的なストレスチェック
メンタルヘルス対策として、年1回のストレスチェックを実施し、長時間労働に起因する健康リスクを早期に発見できる体制を整えることが重要です。
医師による面接指導制度の導入
月80時間を超える時間外労働が発生した従業員には、医師による面接指導を実施し、体調に応じた対応を取りましょう。
3. 労働環境改善のための社内コミュニケーション強化
従業員の意見を反映する場を設置
業務負担が過重であったり労働時間の管理が適正でない場合、従業員からのフィードバックが有効です。衛生委員会の活用や社内アンケートを通じて、労働環境に対する意見を吸い上げましょう。
働き方改革チームの設置
人事部門などが中心となり、「働き方改革チーム」を設けて、働き方の見直しや労働時間削減のための取り組みを進めましょう。
4. 職場での生産性向上策の導入
業務プロセスの見直し
業務効率を上げるため、手順の見直しや自動化の検討を行いましょう。不要な作業を削減することが、長時間労働を防ぐための第一歩です。
テレワークやフレックスタイムの活用
業務内容や職種に応じて、柔軟な勤務制度を導入することで、従業員の時間的な余裕を確保し、無理なく働く環境づくりを目指しましょう。
長時間労働の是正で企業にもたらされるメリット
長時間労働が是正されることで、従業員のメンタル・フィジカルの健康維持だけでなく、生産性の向上や離職率の低下にもつながります。企業としても健康的な職場環境を維持することが社会的な評価につながり、将来の発展基盤となるでしょう。
まとめ
厚生労働省は、今後も長時間労働の是正に向けた取り組みを強化し、11月の「過重労働解消キャンペーン」期間中には重点的な監督指導を行うとのことです。企業における長時間労働の是正は、法令遵守だけでなく、従業員の健康と企業の持続可能な成長に直結しています。厚生労働省の取り組みも参考にしながら、今一度職場環境の改善に向けた取り組みを実施してみてはいかがでしょうか?
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長時間労働が疑われる事業場に対する令和5年度の監督指導結果について|熊本労働局
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