年次有給休暇は繰り越し分、今年の分、どちらから消化するのか?の疑問にスッキリ解説
年次有給休暇の取得について、企業様からよくあるご相談です。
実は、どちらでも構いません。
労働基準法では、どちらから先に消化しないといけません、といった定めはないのです。
定めがないからまた悩みますよね。
ただ、特に就業規則などで定めていなければ、繰り越した分から消化するという解釈が多いようです。そちらのほうが従業員にとっても有利ですよね。
その年度の取得できなかった分を翌年に繰り越すわけですから、繰り越し分から消化するというのが趣旨に合っていると思います。
また、繰り越しは翌年に限り繰り越せますので、繰り越し分をその年に消化できなかったら、その分の日数は消滅します。
もし、その年の分から取得させたい場合は、就業規則にきちんと定めておく必要があります。
これまで前年度分から取得させていたのに、ある時から就業規則を変更してその年の分から消化する、というように変更するときは、注意が必要です。
就業規則の変更は、労働契約法(労働契約法10条)という法律で定められていて、
就業規則の変更が合理的かどうか、以下の判断要素をもとに合理性が判断されます。
労働者の受ける不利益の程度 労働条件の変更の必要性 変更後の就業規則の内容の相当性 労働組合等(労働組合がない場合は過半数労働者代表)との交渉の状況 |
今年の分から取得すると、従業員に不利益があるのか、不利益がある場合はどれくらいの不利益なのか、変更した必要性は何か、などの説明が求められます。
安易に、今年から変更!というようには残念ながらできませんので慎重に進めましょう。
労務管理の実務上は結局どっちがいい?
法律論はさておき、これから人口減少により、労働力不足は企業にとっては深刻な問題です。
従業員の働きやすさや、定着を考えれば、繰り越し分から消化するほうが自然ですし、
繰り越し分から先に消化する企業が多い中、自社は今年の分から消化となると、従業員満足度にも自ずと影響し、そうなれば定着率にも悪くなります。
そうはいっても、現在の企業の状況からすると、毎年全日数消化するのは現実的には困難な企業もあると思います。
業務の効率化を進めて頂き、取得しやすい環境を作るよう努力している、ということを従業員にしっかりと説明して、納得したうえで業務にあたってもらいましょう。
なお、現在は、1年に10日以上付与される場合は、1年間に5日は必ず取得する義務がありますので、ご注意ください。