「育児休業給付金の申請を忘れていたことに後から気づいた」――そんな経験はありませんか?
雇用保険には、離職や育児・介護などのライフイベントに直面したとき、生活を支えるさまざまな給付金があります。しかし、これらの給付金には「申請期限」と「時効」があり、それを過ぎると受給できなくなってしまうことも。
この記事では、企業の人事・労務担当者として知っておきたい雇用保険給付の申請期限と時効について、基本的な考え方や注意点をわかりやすく解説します。
1.雇用保険の給付申請、期限を過ぎても申請できる?
雇用保険の給付金は、原則として定められた「申請期限」内に手続きを行う必要があります。しかしながら、厚生労働省の資料では、以下のように記載されています。
雇用保険の迅速な給付のため、申請期限に申請を行っていただくことが原則ですが、申請期限を過ぎた場合でも、時効が完成するまでの期間(2年間)について申請が可能です。
【出典:厚生労働省「雇用保険の給付金は、2年の時効の期間内であれば、支給申請が可能です」資料より】
つまり、申請期限をうっかり過ぎてしまった場合でも、「時効成立前(原則2年以内)」であれば、申請できる可能性があるのです。
ただし、同資料には「未支給給付を除く求職者給付及び教育訓練支援給付金については、定められた期限までに必要な手続きを行わなければ支給されません。」とありますので、時効前であっても、期限を過ぎると受け取れないことがあります。
そのため、「時効内なら大丈夫」とは限らず、まずは申請期限を守ることが大前提です。
2.主な給付金の申請期限は?
各種給付金には、それぞれ異なる申請期限が設定されています。以下はその一部です。
未支給給付(失業等給付・育児休業等給付)
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基準日:受給資格者が死亡した日の翌日
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申請期限:基準日から起算して6カ月以内
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時効:2年
再就職手当
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基準日:1年以上引き続き雇用されることが確実と認められる職業に就いた日の翌日
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申請期限:基準日から起算して1カ月以内
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時効:2年
高年齢雇用継続基本給付金
- 基準日:なし
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申請期限:支給対象月の初日から起算して4カ月以内
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時効:2年
育児休業給付金
- 基準日:なし
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申請期限:支給単位期間の初日から4カ月を経過する月の末日までに申請
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時効:2年
3.企業として知っておくべきポイント
給付の情報は早めに伝える
従業員が対象になる可能性がある給付については、早めに案内しましょう。たとえば、育児休業に入る社員には「育児休業給付金」や「出生時育児休業給付金」の申請スケジュールを説明しておくと安心です。
離職後も連絡をとる体制を
離職後に再就職手当などを受け取る可能性がある場合、元従業員が必要な証明書を依頼してくることもあります。スムーズに対応できるよう、社内の体制を整えておきましょう。
「就業手当」は令和7年3月で終了予定
「就業手当」は令和7年4月1日に制度廃止予定です。令和7年3月31日までに要件を満たしていれば対象となりますが、それ以降は対象外となるため、注意が必要です。
4.まとめ:申請漏れを防ぎ、安心して給付を受けるために
雇用保険の給付制度は、従業員が安心して生活やキャリアの変化に対応できるよう設計されています。しかし、制度の詳細や申請手続きが複雑なため、「知らなかった」「間に合わなかった」となるケースも少なくありません。
企業の人事・労務担当者としては、
- 制度の概要と期限を把握すること
- 対象従業員に早めに情報を伝えること
- 必要な書類の発行などを迅速に行う体制をつくること
が求められます。給付の申請期限・時効についてご不明な点がある場合は、ハローワークの雇用保険窓口に相談してみましょう。
詳細は、こちらの資料にてご確認下さい。
厚生労働省「雇用保険の給付金は、2年の時効の期間内であれば、支給申請が可能です」
※本記事の内容は令和7年4月1日厚生労働省から公表の「雇用保険の給付金は、2年の時効の期間内であれば、支給申請が可能です」資料を基に作成しています。