健康保険の傷病手当金をおさらい
傷病手当金は、健康保険に加入している人が、業務以外の病気やけがで休んだ時に、健康保険から給付されるものです。「業務以外」となっていますが、業務が原因での病気やけがは労災保険から給付されます。
詳しい要件は次のようになっています。
〇療養のための労務不能であること。
〇4日以上仕事を休んでいること。
〇給与の支払いがないこと。
この傷病手当金ですが、退職後ももらえる場合があるって知っていましたか?いくつが条件がありますが、この条件を満たせば退職後も傷病手当金をもらうことができます。では、どんな条件があるのかを解説します。
退職後に傷病手当金を受給するには?
この退職後の傷病手当金の給付のことを「資格喪失後の継続給付」といいます。次の2点の条件を満たしていいれば退職後も引き続き傷病手当金を受けることができます。
受給できる期間は、今まで受給した期間の残りの期間です。
〇被保険者の資格喪失をした日の前日(退職日)までに継続して1年以上の被保険者期間 (健康保険任意継続の被保険者期間を除く)があること。
〇資格喪失時に傷病手当金を受けているか、または受ける条件を満たしていること。
(なお、退職日に出勤したときは、継続給付を受ける条件を満たさないために資格喪失後(退職日の翌日)以降の傷病手当金はお支払いできません。)
継続して1年以上の被保険者期間
継続して1年以上の被保険者期間が必要となっています。この継続して1年以上とは、会社や保険者(けんぽ協会と健康保険組合)違っていてもOKです。
A株式会社:令和3年1月1日から令和3年10月31日まで被保険者
B株式会社:令和3年11月1日から令和4年3月31日まで被保険者
⇒継続して1年以上あるのでOK!
もし、1日でもブランクがあったらNGです。以下のような場合です。
A株式会社:令和3年1月1日から令和3年10月30日まで被保険者
B株式会社:令和3年11月1日から令和4年3月31日まで被保険者
⇒10月31日が1日ブランクになっているのでNG、、、
この要件を見落としている場合が時々あります。傷病手当金について従業員から問い合わせがあったら、被保険者期間はどれくらいなのかをきちんと把握して間違えないように説明しましょう。
資格喪失時に傷病手当金を受けているか、または受ける条件を満たしている
「資格喪失時に傷病手当金を受けている」とは、傷病手当金を受給していた人が退職した場合です。ですから、退職日に1日でも受給してたら受給可能です。こちらはわかりやすいですね。
では、「受ける条件を満たしている」とは、どういうことでしょうか?
待期期間を満たしていて、傷病手当金が報酬や障害年金の額との調整により支給停止されている状態のことです。ほんとだったら、もらえる条件を満たしていたんだけど、お給与や障害年金の調整がかかって、傷病手当金をもらってなかった場合です。
在職中の傷病手当金は、同じ病気等については、途中で仕事をして、また休むことになった場合でも申請することが出来ます。
つまり、退職後は断続して傷病手当金を受けることができません。ここが、在職中の傷病手当金とは違うところですので、注意が必要です。
とありますが、これは、傷病手当金をもらって休んでいたのに、退職日に最後だからとか言ってその日だけ出勤したら「資格喪失時に傷病手当金を受けている」に該当しなくなり、退職後は受給できなくなります。この点、くれぐれも注意しましょう。
受給できる期間は法改正による通算化されました!
受給できる期間は、令和4年1月1日から支給期間が通算化されました。同一のケガや病気に関する傷病手当金の支給期間が、支給開始日から通算して1年6ヶ月に達する日まで対象となりました。これまでは、支給開始から1年6ヶ月でした。ですから、実際には6ヶ月の受給だったとしても、最初に受給した日から1年6ヶ月経ったらもらえなかったので、より使いやすくなりましたね。
まとめ
今回は、退職後の傷病手当金の受給について解説しました。病気等でお仕事ができない方にとっては、傷病手当金は生活するのに大切な給付です。退職後でも受給できる条件や、在職中とは違うところを理解して、従業員から問い合わせがあったときは、正しく回答できるようにしておきましょう。