はじめに
「業務効率化のはずが、現場が活気を失っている…?」
DXや業務の標準化を進める企業が増える一方で、「なぜか組織の活力が低下している」と感じる経営者が少なくありません。
DXの推進や業務プロセスの見直し、分業化の徹底など、効率化は企業の競争力を高める重要な要素です。しかし、その一方で、効率化を求めすぎるあまり、従業員の業務が細分化されすぎてしまい、仕事の全体像が見えなくなるという弊害が生じることがあります。
その結果、企業が誤った方向に進んでいても、それに気づく人がいなくなるというリスクが発生します。本記事では、組織マネジメントの視点からこの問題を捉え、企業が取るべき対応策について考えていきます。
業務効率化がもたらす組織の弊害
1. 現場の創意工夫が失われる
業務がマニュアル化されすぎると、従業員は 「言われたことをやるだけ」 になりがちです。本来なら、業務の中で気づくはずの小さな改善点が見逃され、結果として業務効率のさらなる向上が妨げられる という弊害を生みます。
2. リスクの発見が遅れる
業務の流れを部分的にしか見ていないと、業務プロセス全体におけるリスクや問題点を発見しにくくなります。「自分の仕事の範囲では問題がない」と考えてしまい、全体の最適化が損なわれる可能性があります。
3. 社員のエンゲージメントが低下する
業務が細分化されすぎると、社員が「自分の仕事の意義」を感じにくくなり、モチベーションが低下しやすくなります。特に、「自分のやっていることが会社の成長につながっている」という実感を得られないと、エンゲージメントの低下につながる可能性が高くなります。
では、このような弊害を防ぐために、企業はどのような対策を講じるべきでしょうか。
企業が取り組むべき4つの対策
1. 業務の「意味」を共有する
業務の細分化は避けられない場合もありますが、その業務が「何のために行われているのか」を従業員に明確に伝えることが重要です。
〇「この作業の目的は〇〇であり、最終的に△△に貢献する」という説明を習慣化する。
〇仕事の意義を感じられるよう、顧客の声や成果を従業員と共有する。
2. 部門間のコミュニケーションを促進する
業務の部分最適ではなく、全体最適を目指すためには、部門間の連携が不可欠です。
〇「なぜこの業務が必要なのか?」を部署を超えて議論する場を設ける。
〇管理職が単なる指示役ではなく、部門間の橋渡しを担うよう促す。
3. 「考える文化」を醸成する
従業員が単なる作業者ではなく、自ら考え、判断し、改善できる環境を整えることが重要です。
〇「なぜ?」を問う習慣をつくり、問題発見の意識を高める。
〇仕事の目的や全体像を理解できるような教育・研修を実施する。
4. KPIの見直し 効率化から組織成長へシフト
業務効率化を推進する際、多くの企業では 「作業時間の短縮」や「生産量の向上」など、効率性に特化したKPI(Key Performance Indicator) を設定しがちです。しかし、効率化ばかりを重視すると、従業員のモチベーションや組織の持続的な成長が後回しになってしまうことがあります。そこで、単なる効率化指標だけでなく、組織の成長や働く人の意欲を高めるKPIを取り入れることが重要 です。
〇従業員満足度
〇業務改善の提案数
顧客満足度
業務効率化が進むと、「速さ」や「コスト削減」が重視されるあまり、顧客対応の質が低下するリスクがあります。例えば、業務プロセスの自動化を進めた結果、顧客との接点が減り、サービスの質が下がることも…。
業務効率化の結果が「顧客満足度」にどう影響しているかを評価することで、企業の成長につながる改善を図れます。
従業員満足度
業務の効率化が進むと、仕事の負担が軽減される反面、仕事のやりがいが減るケースもあります。特に、業務が細分化されすぎたり、創意工夫の余地がなくなったりすると、「自分の仕事が会社にどう貢献しているのかわからない」→モチベーション低下→離職率上昇 という流れになりかねません。
業務改善の提案数
業務効率化の本来の目的は、単なる時間削減ではなく、「より良い仕事の仕方を生み出すこと」。そのため、現場の従業員が自発的に業務改善を提案し、主体的に考える文化を醸成することが、組織の活力を維持するカギとなります。
まとめ
生産性向上は企業経営において不可欠ですが、過度な効率化が組織の活力を奪うリスクもあります。また、業務の細分化が進みすぎると、社員の創意工夫が失われ、エンゲージメントの低下を招くことになりかねません。
本記事で紹介した4つの対策を取り入れることで、業務効率化の弊害を抑え、組織の活力を維持しやすくなります。短期的な効率だけでなく、組織の持続的な成長につながるマネジメントを意識し、組織の活力を維持し、持続的な成長を目指しましょう。