従業員を雇用する場面では、「これは法律上どう考えればよいのだろう」と迷うことがあります。
そのときに、まず土台となるのが労働基準法です。
労働基準法は、労働時間や休日、賃金、年次有給休暇、解雇など、働くうえでの基本的なルールを定めた法律です。正社員だけでなく、パートやアルバイトなど、名称にかかわらずすべての労働者に関わるルールとされています。
この記事では、企業がまず押さえておきたい労働基準法の基本ポイントを、わかりやすく整理してご紹介します。
1.まず知っておきたい 労働基準法とは
労働基準法は、働く人の労働条件の最低基準を定めた法律です。
企業が従業員を雇うときには、この法律に沿って労務管理を行う必要があります。
労働条件は、会社ごとに自由に決められる部分もありますが、法律で定められた基準を下回ることはできません。
そのため、労務管理の実務では、まず「法律上の基本ルール」を知っておくことが大切です。
2.採用時に気をつけたいこと
労働条件はきちんと明示する
従業員を採用するときは、労働条件を明示しなければなりません。
たとえば、契約期間、就業場所、業務内容、労働時間、休日、賃金、退職に関することなどは、必ず明示が必要です。昇給に関することも含まれます。原則として書面で交付する必要があります。
採用時の説明があいまいだと、後から「聞いていた内容と違う」という行き違いにつながることがあります。
最初の段階で、条件を明確に伝えておくことが大切です。
3.賃金の基本ルール
給与はルールに沿って支払う必要があります
賃金の支払いには、守るべき基本ルールがあります。
賃金は、通貨で、直接本人に、全額を、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払うことが原則です。いわゆる「賃金支払の5原則」です。最低賃金を下回ることもできません。
給与は、従業員の生活に直結する大切なものです。
毎月の支払いだからこそ、基本を確実に押さえておく必要があります。
4.労働時間・休日の基本ルール
働かせすぎを防ぐための基準があります
労働時間の上限は原則、1日8時間、1週40時間です。
※変形労働時間制などを採用する場合はこの限りではありません。また、10人未満の商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業は1週44時間です。
また、休日は少なくとも毎週1日、または4週間を通じて4日以上与える必要があります。
この上限を超えて働いてもらう場合や、休日に勤務してもらう場合には、36協定の締結と届出が必要になります。さらに、時間外労働には上限規制があり、原則は月45時間・年360時間です。特別条項がある場合でも、守るべき上限があります。
忙しい時期は長時間労働が常態化しやすいため、日頃から勤務実態を把握し、適切に管理することが重要です。
5.休憩のルール
休憩は「あること」だけでなく実態も大切です
休憩は、6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上、勤務時間の途中で与えなければなりません。
また、休憩時間中であっても、電話対応や来客対応をしている場合は、労働時間とみなされることがあります。
形式的に休憩時間を設けるだけでなく、実際に休めているかどうかが大切です。
6.残業代のルール
時間外・休日・深夜には割増賃金が必要です
時間外労働、休日労働、深夜労働をさせた場合には、割増賃金を支払う必要があります。
時間外労働は2割5分以上、休日労働は3割5分以上、深夜労働は2割5分以上の割増率とされています。なお、1か月60時間を超える時間外労働は5割以上です。
残業代の未払いは、大きなトラブルにつながりやすい部分です。
勤怠管理とあわせて、割増賃金の考え方も確認しておきたいところです。
7.年次有給休暇の基本
パート・アルバイトにも有給休暇はあります
年次有給休暇は、入社から6か月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に付与されます。これは正社員だけでなく、要件を満たすパート・アルバイトにも当てはまります。
また、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者については、企業が年5日取得させる義務があります。
「本人が取らないからそのまま」という扱いでは済まないため、会社側の管理も必要です。
8.退職・解雇で注意したいこと
解雇は自由にできるものではありません
やむを得ず解雇を行う場合には、原則として30日以上前の予告、または30日分以上の解雇予告手当が必要です。
さらに、解雇は、客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当と認められない場合は無効となります。業務上の傷病による休業期間や産前産後の休業期間など、原則として解雇できない期間もあります。
退職や解雇は、会社にとっても従業員にとっても影響の大きい場面です。
慎重な判断と対応が欠かせません。
9.就業規則の整備
常時10人以上なら作成と届出が必要です
常時10人以上の労働者を使用している場合は、就業規則を作成し、労働者代表の意見書を添えて労働基準監督署へ届け出る必要があります。変更した場合も同様です。就業規則は、作成するだけでなく、従業員へ周知しなければなりません。
(10人未満であっても、就業規則は作成することが望ましいです。)
就業規則は、会社のルールを明確にする土台です。
そのため、10人未満であっても、就業規則は作成することが望ましいです。
就業規則の作成に当たっては、今の実態に合っているか、きちんと周知できているかを定期的に確認しておくことが大切です。
10.そのほかに確認しておきたいこと
労働時間の把握や健康診断、保険加入も重要です
労働時間の状況は、タイムカードやパソコンのログ記録など、客観的な方法などで把握することが求められています。
また、健康診断は採用時とその後毎年1回の実施が必要です。労働者を1人でも雇用する場合には、労災保険・雇用保険への加入も必要です。
日々の業務の中では後回しになりがちな部分ですが、基本的な労務管理として押さえておきたいポイントです。
まとめ
迷ったときは、まず基本に立ち返ることが大切です
労働基準法は、労務管理の土台になる法律です。
労働条件の明示、賃金の支払い、労働時間の管理、年次有給休暇、解雇、就業規則など、日々の実務に関わる基本ルールが定められています。
人事労務で迷ったときは、まず基本に立ち返ることが大切です。
「今の運用で問題ないだろうか」と確認するきっかけとして、ぜひ参考にしてみてください。