フリーランスという働き方は、柔軟な働き方の一つとして多くの企業にとって重要なリソースとなっています。しかし、フリーランスとの関係を適切に保つためには、企業側もフリーランス法(正式には「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」)の規定をしっかりと理解し、遵守することが必要です。本記事では、企業が整備すべきことと注意すべきポイントについて解説します。
1. 取引条件の明示義務
フリーランス法では、取引条件を明示する義務が企業に課されています。この義務の目的は、フリーランスと発注者との間で認識のずれが生じるのを防ぐためです。具体的には以下の点を契約書や書面で明示する必要があります。
- 業務内容、成果物の詳細
- 納期と納品場所
- 報酬額および支払い期日
明示は、書面または電磁的方法(例えば電子メールやSNSのメッセージ)で行う必要があり、口頭での取り決めは認められていません
2. 期日における報酬支払義務
報酬は、業務委託を受けてフリーランスが成果物を納品した日から60日以内に支払う義務があります。支払いが遅れることはフリーランスにとって大きな負担となるため、この規定を守ることで信頼関係を構築することができます。また、支払期日は具体的に日付を明示することが重要です。曖昧な「〇日以内」といった表現ではなく、正確な期日を指定する必要があります。
3. 禁止されている行為
フリーランスに【1か月以上※】の業務委託をしている発注事業者には、7つの禁止行為が定められています。たとえフリーランスの了解を得たり、合意していても、また、発注事業者に違法性の意識がなくても、これらの行為は本法に違反することになるので十分注意が必要です。
- 受領拒否
- 報酬の減額
- 返品
- 買いたたき
- 購入・利用強制
- 不当な経済上の利益の提供要請
- 不当な給付内容の変更・やり直し
いくつか具体的に説明すると…
受領拒否:理由なく成果物の受け取りを拒むこと。
報酬の減額:業務終了後に理由もなく報酬を減額すること。
返品:納品後に一方的な都合で返品すること。
買いたたき:フリーランスの作業に対して著しく低い報酬を強制すること。
これらの行為は、フリーランスの立場を著しく不利にし、トラブルの原因となります。企業側は、契約内容に基づき誠実に対応することが求められています。
4. 募集情報の的確表示義務
フリーランスを募集する際には、広告や募集情報に虚偽や誤解を招く内容がないように注意する必要があります。例えば、報酬額や業務内容を誇張するような表現は厳禁です。また、常に正確で最新の情報を提供することが求められます。これにより、フリーランスとのトラブルを未然に防ぐことができます。
5. ハラスメント対策に係る体制整備義務
フリーランス法は、ハラスメント対策の体制整備も義務付けています。企業は、フリーランスが安心して業務を遂行できるよう、セクシュアルハラスメントや妊娠・出産に関するハラスメントなどに対する防止策を講じる必要があります。フリーランスからの相談に迅速に対応するための窓口を設けるなど、適切な対応を心掛けることが重要です。
6.育児介護等と業務の両立に対する配慮義務
6か月以上の業務委託における育児介護等と業務の両立を目的とした義務です!
発注事業者は、フリーランスからの申出に応じて、
• 6か月以上の期間で行う業務委託について、フリーランスが妊娠、出産、育児または介護(育児介護等)と業務を両立できるよう、必要な配慮をしなければなりません。
• 6か月未満の期間で行う業務委託について、フリーランスが育児介護等と業務を両立できるよう、必要な配慮をするよう努めなければなりません。
7.中途解除等の事前予告・理由開示義務
フリーランスが次の取引に円滑に移行するための義務です!
・発注事業者は、①6か月以上の期間で行う業務委託について、②契約の解除または不更新をしようとする場合、③例外事由に該当する場合を除いて、解除日または契約満了日から30日前までにその旨を予告しなければなりません。
• 予告がされた日から契約が満了するまでの間に、フリーランスが解除の理由を発注事業者に請求した場合、発注事業者は、例外事由に該当する場合を除いて、遅滞なく開示しなければなりません。
まとめ
フリーランスと健全な関係を築くために
フリーランス法は、企業がフリーランスと適切な関係を築くために守るべき基本ルールを定めています。企業はフリーランスを単なる外部リソースではなく、重要なパートナーとして尊重し、法律を遵守することで双方が安心して取引できる環境を整備しましょう。
詳しくは、こちらのパンフレットをご覧ください。
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