労働者過半数代表の選出方法について解説します
年度末になり、人の異動が多くなる時期ですね。
また、年度替わりに伴う各種手続きも必要になりますが、その一つに36協定届の更新手続きもありますね。
有効期間の起算日を年度初めの4月1日とされている企業が多いのではないでしょうか。
36協定届は自動更新ではありませんので、有効期間が切れる前に、新たな労使協定を結び、労働基準監督署へ届出が必要です。
労使協定は企業(使用者)と労働者過半数で組織する労働組合、労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者と締結をします。
この労働者の過半数を代表する者の選出については、適正に行われていないと、36協定は無効となってしまいます。
36協定が無効になってしまうと、法定労働時間外労働や、法定休日労働をさせたことが違法となります。
36協定が無効となった事例
最近あった、無効な36協定で違法残業を行わせたとして、書類送検になった事例をご紹介します。
縫製業を営んでいる企業において、労働基準監督署が調査したところ、違法な時間外・休日労働をがあったことを確認しました。
その際、届出をしていた36協定を確認したところ、代表となっていた実習生は協定の内容を全く理解しておらず、企業側で一方的に指名し締結させたとみて無効と判断しました。
この企業は、労働者は7人で被疑者である労務管理責任者1人を除いては、全員が外国人技能実習生でした。
労働基準監督署は、「実習生を代表にするもは問題ないが、民主的な方法で選出する必要があった」との見解を示しています。
労働者過半数代表の適正な選出方法
まず、過半数代表となるための要件があります。
過半数代表となるために要件:管理監督者でないこと
管理監督者とは、労働条件の決定、その他労務管理について経営者と一体的な立場にある人を指します。
労働基準監督者とは一般的には、部長や工場長などを指します。
主任や課長といった役職名があるからといって即管理監督者に該当するとは限りませんが、該当する可能性がある人、判断に迷う際には避けた方がいいでしょう。
過半数代表者を選出するための正しい手続き
36協定届を締結するための過半数代表者を選出することを明らかにしたうえで投票・挙手などによる民主的な方法で選出します。
選出の手続きは、投票・挙手のほかに労働者での話し合いや、持ち回りでも構いません。
労働者の過半数がその人を代表者として支持していることが明確になるような民主的な手続きが必要です。
使用者から一方的に指名した代表は無効となりますので、くれぐれも注意しましょう。
ただ、労働者代表になりたい人、と希望を募っても、希望者がいない場合があります。こういた場合には、企業側から候補者を推薦することは可能です。その推薦した人を従業員に周知して、民主的な方法で選出します。
また、代表と労使協定を結ぶ際には、その内容もしっかりと説明して、理解してもらうようにしましょう。
先ほどの事例で説明したように、労使協定が無効になってしまうと、残業をさせていたこと自体が違法となってしまい、企業にとっては、信用も失墜し、大きな損害となってしまいます。
「知らなかった」では残念ながら通用しません。最近では、労働基準監督署も、この過半数代表の選出方法については、周知も行い、重要視しているようです。
労働基準監督署の調査でも、現場の従業員に従業員代表を確認して、民主的に選出されたかどうかを実態調査をしたりします。
来年度の36協定届を締結する前に、労働者の選出方法を確認しましょう。